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広島地方裁判所 平成2年(行ウ)8号 判決 1993年3月23日

広島市中区三川町10番10号

原告

有限会社愛和ガレージ

右代表者代表取締役

香川睿子

右訴訟代理人弁護士

胡田敢

右同

我妻正規

広島市中区上八丁堀3番19号

被告

広島東税務署長 米今喜作

右指定代理人

大西嘉彦

安友源六

岡田克彦

大橋勝美

矢野聡彦

西村章

主文

一  本件訴えのうち,被告が原告の昭和62年5月1日から同63年4月30日までの事業年度の法人税について平成元年3月24日付けでなした更正処分のうち所得金額2,529,259円を超えない部分の取消を求める請求部分を却下する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告の昭和62年5月1日から同63年4月30日までの事業年度の法人税について平成元年3月24日付けでなした更正処分のうち所得金額1,097,476円を超える部分及び法人税額329,100円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分(但し,いずれも国税不服審判所長が平成2年3月26日付けでなした審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

1 本件訴えのうち,被告が原告の昭和62年5月1日から同63年4月30日までの事業年度の法人税について平成元年3月24日付けでなした更正処分のうち所得金額2,529,259円を超えない部分の取消を求める請求部分の訴えを却下する。

2 右訴えに係る部分の訴訟費用は原告の負担とする。

(本案の答弁)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は,不動産の賃貸及び管理等を目的とする有限会社である。

2  原告は,昭和62年5月1日から同63年4月30日までの事業年度(以下「昭和63年4月期」という。)分法人税について,課税標準たる所得金額を2,529,259円,法人税額を317,200円として確定申告(以下「本件申告」という。)をなしたところ,被告は,昭和63年12月27日付けで,課税標準たる所得金額を3,564,047円,法人税額を619,600円と更正する旨,及び過少申告加算税30,000円を賦課する旨の各処分をなし,次に,平成元年3月24日付けで,課税標準たる所得金額を2,529,259円,法人税額を317,200円と減額更正する旨の処分をなし,更に同日付けで,課税標準たる所得金額を3,564,047円,法人税額を619,600円と増額更正する旨,及び過少申告加算税30,000円を賦課する旨の各処分(以下「本件処分」という。)をなした。

原告は,本件処分を不服として,平成元年5月22日,国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ,平成2年3月26日付けをもって,本件処分の一部(課税標準たる所得金額については3,163,732円を,法人税額については499,300円を,過少申告加算税額については18,000円をそれぞれ超える部分)を取り消す旨の裁決があり,同じ頃,その旨の通知を受けた。

3  しかしながら,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)は,次の理由により違法である。

(一) 原告は,青色確定申告を行っており,この場合,欠損金の繰越が認められるところ(法人税法57条),原告は,昭和58年5月1日から昭和59年4月30日までの事業年度(以下「昭和59年4月期」という。)の確定申告においては,繰越の認められた当初欠損金1,459,663円を計上したが,昭和59年5月1日から昭和60年4月30日までの事業年度(以下「昭和60年4月期」という。)以降の確定申告においては,欠損金の繰越をしなかった。

欠損金の繰越は,5年間にわたり認められ,5年間の任意に選択した時期に,欠損金額を限度として任意に決定した金額を,損金に算入することができる。

(二) 従って,昭和63年4月期の課税標準たる所得金額は,本件申告額である2,529,259円から1,431,783円(右1,459,663円から昭和62年度までに当初欠損金額により控除された所得金額27,880円を控除した額)を控除した額である1,097,476円となる。

しかるに,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)において,課税標準たる所得金額は3,163,732円とされた。従って,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)のうち,課税標準たる所得金額1,097,476円を超える部分は違法である。

(三) 原告は,本件申告において,昭和58年8月に取得した「愛和ビル」(以下「本件建物」という。)の原価償却費を算出するに当たり,本件建物に係る建築工事のうち,金属製建具工事,木製建具工事,硝子工事,内装工事のうち畳敷物,雑工事のうちバスユニット及びトイレユニット(以下「本件建具等」という。)は,法人税法31条所定の政令である同法施行令56条による「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(以下「耐用年数省令」という。)別表第一に掲げる「器具及び備品」に該当するとして,本件建物とは別個に3年ないし15年の耐用年数を適用して償却限度額を計算し,その結果,769,397円(その内訳は,別紙1「償却限度額」欄に記載のとおりである。)を減価償却費として,昭和63年4月期の損金の額に算入した。しかるに,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)において,本件建具等は,本件建物を構成しており,本件建物の耐用年数である36年が適用されるとして,償却限度額が408,027円とされたうえ,原告申告の減価償却費のうち361,370円は償却超過額であり,損金に算入されないとされた。

(四) しかし,本件建具等は,耐用年数省令別表第一に掲げる「器具及び備品」に該当し,本件建物とは別個のそれ自体特有の耐用年数を適用して,償却されるものであるから,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)は違法である。

よって,原告は,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)のうち所得金額1,097,476円を超える部分及び法人税額329,100円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分の取消を求める。

二  被告の本案前の主張

原告は,本訴において,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)のうち所得金額1,097,476円を超える部分の取消を求めているが,原告の本件申告によれば,その課税標準たる所得金額は2,529,259円である。納税義務の確定は,納税者が確定申告書を提出することによって生ずるのであって,その後は,原則として更正の請求という手続(国税通則法23条)によってのみ,その金額の減額変更を求め得るところ,このような更正の請求手続を経由しないで,納税者において申告額が過大であるとして,更正処分のうち申告額を超えない部分の取消を求めることは,納税者の自認する所得金額の範囲を超えて更正処分の取消を求めることになるから,訴えの利益を欠くものというべきである。

従って,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)について,申告額である課税標準たる所得金額2,529,259円を超えない部分の取消を求める訴えは,不適法として却下すべきである。

三  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2の各事実は認める。

2  同3のうち,(一)及び(三)の各事実は認めるが,(二)及び(四)は争う。

四  被告の主張

本件建具等には,租税特別措置法52条の4に規定する政令である同法施行令30条の2別表の本件建物の耐用年数が適用されるから,本件建具等に本件建物の耐用年数である36年を適用した本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

1  耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」とは,機械及び装置以外の有形減価償却資産で,耐用年数省令別表第一に掲げられた他の種類の資産である建物,建物附属設備,構築物,船舶,航空機,車両及び運搬具並びに工具以外のものをいい,とりわけ,建物内に設置されたものについていえば,建物とは構造上独立,可分のものであり,かつ,機能上建物の用途及び使用の状況に即した建物本来の効用を維持する目的以外の固有の目的により設置されたもののみが右の「器具及び備品」に該当するものと解される。

すなわち,

(一) 本件建物は,鉄筋コンクリート造,6階建ての建物であるが,原告は,本件建物を訴外有限会社世羅別館(以下「訴外会社」という。)に賃貸し,訴外会社は,国際観光ホテル整備法の規定に基づき,国際観光ホテルの登録を運輸大臣から受けて,本件建物全体を旅館の用に供している。

国際観光ホテル整備法は,一定の基準に合致するホテル又は旅館を登録させ,この登録を受けたホテル業又は旅館業の用に供する減価償却資産の耐用年数について,同法8条の規定により,一般の耐用年数より短い耐用年数による償却を認め,その具体的な年数は,租税特別措置法52条の4,更に,それを受けた同法施行令30条の2別表(以下「租税特別措置法施行令30条の2別表」という。)において定められている。

(二) 減価償却は,企業会計上,企業が設備等に投下した資本をその設備等の効用持続年数に応じて費用配分する手続であり,その効用持続年数としての償却期間は,各企業が自主的に各資産毎に定めるものであるが,法人税においては,各企業の恣意性の介入を排除し,租税の公平負担を実現するため,耐用年数省令別表第一によって画一的基準たる法定耐用年数が定められているのであり,租税特別措置法施行令30条の2別表も同趣旨である。

そして,現行の固定資産の法定耐用年数は,原則として通常考えられる維持補修を加える場合における当該固定資産の通常の効用持続年数を基に定められ,この通常の維持補修の範囲は,資本的支出と修繕費の区分に関連するものであり,右固定資産の法定耐用年数は,この区分を具体的に想定して算定されている。

(三) そこで,建物等のような個別的資産の法定耐用年数の具体的な算定についてみるに,右資本的支出と耐用年数との関係を考慮したうえで,中核部分と副次的部分とを総合して算出した年数を基礎として算定し,これに一般的な陳腐化及び現況下の技術及び素材の材質による一般的調整を加える建前がとられている。

建物において,右中核部分とは,建物本体を指し,副次的部分とは,防水設備,床,外装,窓等の内部造作を指す。

建物の耐用年数は,右のように,建物本体の他に,個々の内部造作それぞれの耐用年数を個別に算定した上で,それを総合して算定し,さらに建物の構造及び用途の違いを勘案して,具体的な建物の耐用年数に差を設けており,旅館用なら旅館用というように用途にふさわしい内部造作を想定して耐用年数が算定されているのである。

(四) このような建物の耐用年数算定の趣旨からすると,耐用年数省令別表第一に掲げる「建物附属設備」に該当しない建物の内部造作には,建物の耐用年数が適用されるべきである。

そして,前記耐用年数についての通常の効用持続年数という考え方によれば,建物の耐用年数が適用される内部造作の範囲を,社会通念上,建物と物理的又は機能的に一体不可分であるかどうかという基準によって画するのが合理的である。

2  ところで,本件建物は,租税特別措置法施行令30条2別表の「鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造のもの」の「その他のもの」に該当し,その耐用年数は36年である。

3  本件建具等,いずれも本件建物内に設置されたものであるが,その内容は以下のとおりである。

(一) 金属製建具工事にいう金属製建具は,アルミサッシ製の窓,戸,扉及び金属製扉である。

(二) 木製建具工事にいう木製建具は,室内のふます,引き戸及び開き戸である。

(三) 硝子工事にいう硝子は,右(一)のアルミサッシ製の窓,戸及び扉にはめこまれた硝子である。

(四) 内装工事のうちの畳,敷物は,畳及び床,壁,天井に張りつけられたシートである。

(五) 雑工事のうちのバスユニット及びトイレユニットは,本件建物内の浴室及び便所(以下「浴室等」という。)と予定され,給湯及び給排水設備工事が施工された場所に,防湿性の部材(壁,天井,床,ドア等)を用い,当該部材を相互に連結,結合させ,湿気,水分を漏らさないようにして浴室等を形成するものである。

4  以上によれば,本件建具等のうち,金属製建具(アルミサッシ製の窓,戸,扉及び金属製),木製建具(室内のふすま,引き戸及び開き戸),硝子工事にいう硝子(金属製建具であるアルミサッシ製の窓,戸及び扉にはめこまれた硝子),バスユニット及びトイレユニットは,いずれも本件建物本体に固着し,本件建物と物理的に一体不可分な内部造作であり,また,畳,敷物(畳及び床,壁,天井に張りつけられたシート)も,本件建物と物理的又は機能的に一体不可分な内部造作であり,かつ,本件建具等,本件建物本体と一体となってその効用を維持増進する以外に固有の目的を有するとは認められず,従って,耐用年数省令別表第一の「器具及び備品」には,該当しないものである。

従って,社会通念上,本件建物と物理的又は機能的に一体不可分である本件建具等には,本件建物の耐用年数である36年が適用され,その償却限度額は,別紙2に記載の計算方法により合計408,027円である。

五  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1のうち,(一)及び(二)の各事実は認めるが,(三)は不知,冒頭部分及び(四)は争う。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4は争う。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)のうち所得金額金2,529,259円を超えない部分の取消を求める請求部分の適法性について判断する。

1  請求原因2の事実は,当事者間に争いがない。

2  納税義務は,原則として,納税義務者が確定申告書を提出することによって確定する(国税通則法16条)ところ,確定申告にかかる金額は,納税義務者がその記載の錯誤による無効を主張し得る場合であれば格別,そうでない限り,更正の請求という手続(国税通則法23条あるいは所得税法152条)によってのみ,金額の減額変更を求め得るものである。従って,このような更正の請求手続をとることなく,納税義務者が自己の確定申告書に記載した金額が高額にすぎるとして,更正処分のうち申告額を超えない部分の取消を訴えをもって求めることは,納税義務者の自認する所得金額の範囲を超えて更正処分の取消を求めることになるから,訴えの利益を欠くものとして許されないというべきである。

すると,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)について,申告額である課税標準たる所得金額2,529,259円を超えない部分の取消を求める訴えは,不適法として却下すべきである。

二  原告のその余の請求について判断する。

1  請求原因1,2,3(一),(三)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。

2  被告の主張について判断する。

(一)  被告の主張1(一),(二),2,3の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。

(二)  右争いのない事実に,いずれも成立に争いのない甲第9号証の2,第13号証,撮影対象については原告主張のような写真であることに争いがなく,撮影年月日,撮影者については弁論の全趣旨により原告主張のような写真であることが認められる甲第12号証によれば,本件建具等は,本件建物と物理的,機能的に一体不可分な内部造作であり,かつ,本件建物と一体となって,その効用を維持増進する目的を有するものと認められる。

(三)  本件建具等には,租税特別措置法施行令30条の2別表記載の「建物」の耐用年数と,耐用年数省令別表第一記載の「器具及び備品」の耐用年数のいずれが適用されるかについて判断する。

(1) 耐用年数省令別表第一によれば,「器具及び備品」とは,機械及び装置以外の有形減価償却資産であって,建物,建物附属設備,構築物,船舶,航空機,車両及び運搬具並びに工具以外のものをいうことが明らかである。

(2) 前記の各事実及び前掲の甲第12号証によれば,以下の事実が認定できる。

① 現行の固定資産の耐用年数は,前記のように効用持続年数という考え方を基に定められているが,これは,その固定資産の本来の用途,用法により現に通常予定される効用をあげることができる期間を想定し,かつ,通常考えられる維持補修の費用を期間的損費とする,という前提に立っているものである。通常の効用とは,固定資産の素材,構造,用途,用法などから,その資産がある予定された利用条件のもとに使用される場合において,通常予定される効用をあげることができる期間を,現在の状況によって,客観的,技術的に想定してみた,その意味においての効用を指し,また,通常の維持補修とは,固定資産の通常の効用が平常的に維持確保されるために加えられる,通常必要と考えられる修繕を指す。

ところで,有形固定資産の形状,構造などは,種々雑多であり,固定資産の大多数のものは,数種,数十種,場合によってはより多数の単体を組み合わせてできあがっている複合体であるが,右耐用年数についての効用持続年数という考え方によれば,複合体資産については,まず,固定資産としての本来の効用をあげうるか否かの基準で,減価償却の単位に分解し,単位資産とされるものについて,投下された支出を,資本的支出と修繕費の区分をして,右効用持続年数という考え方に基づく耐用年数が,具体的に算定されるのである。

耐用年数省令別表第一においては,建物,建物附属設備,構築物,船舶,車両及び運搬具,工具並びに器具及び備品が資産別に掲げられているが,これらは,右のような社会的な最小効用の観点から特定された償却単位資産であり,このような社会的な最小効用の観点から,建物は,単位資産とされているのである。

従って,建物の耐用年数は,社会的な最小効用の観点から画された建物に通常考えられる維持補修を加える場合において,その建物の本来の用途,用法により予定されている効用をあげることができる年数を基に算定されるものである。

② 課税実務において策定された「固定資産の耐用年数の算定方式」は,建物について,その建築構造の差異によってこれを5種類に分け,更に,各種類別に用途及び使用状況の差異による区別を設け,その細分された種類ごとに耐用年数を算定する過程を明らかにしているが,右算定方式によれば,本件建物のような鉄筋コンクリート造の建物については,建物を構造上,「防水」,「床」,「外装」,「窓」,「構造体その他」に区分して,それぞれの耐用年数を個別に算定した上で,それを総合して耐用年数を算定し,これに一般的な陳腐化及び現況下の技術及び素材の材質による一般的調整を加えている。更に,ホテル,旅館,料理店,劇場等特殊の用途に使用されるものは,比較的に命数の短い床,窓,壁等に多額の資金を要しているのみならず,しばしば改造が行われ,客引きの競争もあってその有効使用期間は,一般建物の10パーセントないし15パーセント減と見積もるのを適当と認められるので,一般の耐用年数より短縮した耐用年数を定めるものとされている。

③ 耐用年数省令別表第一において,各資産の耐用年数は,「構造」によって区分され,更に,用途,使用の状況等の「細目」の区分別に定められており,右「細目」においては,例えば,旅館,ホテル用の建物について,延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が3割を超えるものについては,一般のものより短い耐用年数が定められている。租税特別措置法施行令30条の2別表も同様である。

(3) 以上の事実を総合すると,建物の耐用年数は,建物本体の他に,個々の内部造作(建物附属設備に該当するものは除く)を総合して算定した上,更に,建物の構造及び用途の違いを勘案して,具体的な建物の耐用年数に差を設けており,旅館用なら旅館用というように用途にふさわしい内部造作を想定して算定されているものと認められる。このような建物の耐用年数算定の趣旨からすると,耐用年数省令別表第一所定の「建物附属設備」に該当しない建物の内部造作のうち,当該建物と物理的・機能的に一体となったものについては,建物の耐用年数が適用され,他方,構造上建物と独立・可分であって,かつ,機能上建物の用途及び使用の状況に即した建物本来の効用を維持する目的以外の固有の目的により設置されたものについては,同所定の「器具及び備品」に関する耐用年数が適用されるものと解される。

(4) すると,本件建具等は,本件建物と物理的又は機能的に一体不可分な内部造作であり,かつ,本件建物と一体となって,その効用を維持増進する目的を有するものであるから,いずれも「建物」の耐用年数が適用されることが認められるところ,本件建物は,租税特別措置法施行令30条の2別表の「鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造のもの」の「その他のもの」に該当し,その耐用年数は36年であるから,本件建具等にも右の耐用年数が適用されるものと認められる。

(三)  以上によれば,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)が本件建具等の耐用年数につき,本件建物と同一の36年を適用したことは正当であり,その償却限度額を別紙2に記載の計算方法のとおり,408,027円としたことにも誤りがないから,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)は適法である。

三  以上のとおりであるから,本訴のうち,本件処分(但し,裁決により一部取り消された後のもの)について,申告額である課税標準たる所得金額2,529,259円を超えない部分の取消を求める訴えは不適法であるからこれを却下することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟7条及び民事訴訟法89条を適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅田登美子 裁判官 古賀輝郎 裁判官 榎本孝子)

<以下省略>

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